絵本の情報
とっときのとっかえっこ
【文】サリー・ウィットマン
【絵】カレン・ガンダーシーマー
【訳】谷川 俊太郎
【出版社】童話館出版
【ページ数】28
「とっときのとっかえっこ」のあらすじ
バーソロミューおじいさんは、ネリーのお隣さん。
ネリーが赤ちゃんだった頃、毎日ネリーをカートに乗せて、散歩に連れてってくれた。
バーソロミューは、ゆっくりカートを押してくれた。
そして、いつも、オリバーさんちの前の道のでこぼこに気を付けるように言うのだった。
「つかまれ、ネル!でこぼこだぞ!」
するとネリーは
「でこぼこ!」
と叫ぶのだった。
バーソロミューは、途中で可愛い犬に会うと、止まって頭をなでてやる。
意地悪いぬだと、しっしっと、追い払う。
プリングルさんのスプリンクラーが回っていると、バーソロミューは言う。
「いいか、いくぞ、すすめーっ!」
ネリーは
「フィー!」
と悲鳴をあげて、二人はしぶきの下をくぐり抜ける。
近所の人たちは、二人を
「ハムエッグ」
と呼んだ。
いつも一緒だったから。
ネリーは、学校にあがった。
そして、バーソロミューはとしをとった。
ある日、バーソロミューは一人で出かけて階段で転んだ。
長い間、病院から帰ってこなかった。
ネリーは、毎日手紙を書いた。
バーソロミューは、車椅子に乗って、帰ってきた。
その目は、もう、ほほえんでいなかった。
ネリーは、バーソロミューを散歩に連れ出した。
やり方は、よーく知っていた。
そうっとやさしく、ゆっくり。
オリバーさんちの道の前では
「でこぼこに、気を付けて!」
と言った。
ネリーは、可愛い犬に会うと、止まって頭をなでてやる。
もし意地悪いぬなら、しっしっと追い払う。
スプリンクラーの所に来ると、
「いいバーソロミュー、行くわよ、いちにい、さん、すすめー!」
そして、しぶきの下をくぐり抜けた。
バーソロミューは、笑った。
「今は、私が押して、バーソロミューが、座る番・・・。
とっかえっこみたいなものね」
感想
子供の成長と、老人(祖父母)の老い。
それを、優しく、自然に描き上げた、心あたたまるお話です。
5歳の娘がよく言います。
「わたしが 成長して、大きくなったら、パパとママは、おじいちゃんとおばあちゃんになって、そしたら、おじいちゃんとおばあちゃん(祖父母)は、もっと歳をとって、いなくなっちゃうんだよね、さみしいね。」
ちょうど今朝も、幼稚園に行く前に、そんなことを心配そうに言っていました。
幼いながら、そんな感情を持つようになったのだなとジーンときてしまいました。
「とっときのとっかえっこ」
という言葉のおもしろさに惹かれて図書館で借りたのですが、訳者を知って、腑に落ちました。
谷川俊太郎さんの言葉の選び方が、私は好きです。
年齢を超えた、女の子とおじいさんの、愛と優しさにあふれた、人間通しの付き合い。
これは、私の父と娘の姿を見ているようで、とても親近感を覚えました。
隣人のおじいさん、という設定が、またいいなと思います。
挿絵も表情豊かで楽しめます。
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