絵本の情報
空をつくる
【著】村尾 亘
【出版社】小さい書房
【ページ数】32
「空をつくる」のあらすじ
ぼくは小さいころから 絵をかくのがすきだった。
とおくの山やきせつの花。
まちのとけいだい。
気もちよいかぜにふかれながら 1日中かいていても あきなかった。
ぼくが大人になるにつれ みどりはつぎつぎと消え かわりに家が建った。
せいたかのっぽの家が きゅうくつにならんでいる。
とおくの山は もう見えない。
となりの家は さいしょは2かいだてだったんだ。
でもつぎからつぎに建て増した。
どうしてかって?
「だっておいしいものが大すきなんだもの。
もっと たくさん 食べたいんだもの。
だから いろいろ うちにおいておくのさ。」
むかいにすむ ともだちもいう。
「だって ぼうしが すきなんだもの。
赤いの 青いの きいろいの。
ながいの ふかいの とんがったの。
もっと いろいろ かぶりたいんだもの。
だから いっぱい うちにおいておくのよ」
いよいよ土地がなくなると 空間をうばいあうように 家が建てられた。
こうして まちは どうなったとおもう?
空がだんだん小さくなっていったのさ。
見上げても、空が見えない。
そこで みんなはかんがえた。
どうしたらいいのか。
「そうだ、空をつくろう!」
「絵かきのサルの家に きれいな空の絵がかざってあるだろう。
まちじゅうを ああいう空の絵でいっぱいにしたら
すこしは気がはれるんじゃないかな」
ぼくのところには「空をかいて」という注文がくるようになった。
いろんな色をつかって ほんものそっくりの絵をかいた。
みんなをよろこばせることができてうれしかった。
注文が入るたびに、とんでいった。
とりが けがをした。
空の絵と気づかずに かべにぶつかってしまったんだ。
そういうきのどくなことは しだいに増えていった。
ぼくは 人気の絵かきになった。
まえよりも大きな家にすめるようになって おいしいものを食べられるようになった。
でも・・・・・。
このまま空をつくりつづけたら、まちはどうなるんだろう。
ぼくたち、空をつくるなんてこと、してよかったのかな。
あいかわらず 家は高くつみ上げられていく。
ほんものの空は さらに小さくなっていく。
ついに ぼくは
まちを出ていく決心をした。
ずっととおくを とりがとんでる。
ああ そうだ。
これが 空だ。
失ってはじめて、ぼくは気づいた。
はてしない空は あたりまえにあるわけじゃなかったってことに。
なくしちゃいけないものだった、ってことに。
おかしくて腹立たしくて哀しくて・・・
絵本を読み終えたら、どうしても空を見上げたくなる
谷川俊太郎(絵本帯より)
感想
主人公の「ぼく」は、可愛いおさるさんです。
「ぼく」が大人になったころ、山の景色は建て増しされた家たちで見えなくなりました。
そしてニセモノの空をつくるために・・・
大好きだった絵を描くことが仕事になりました。
人気の絵描きになり、大金を手にして、大きな家にすみました。
けれど、本物の空は、どんどんなくなっていきました。
「ぼく」は、やがて全てを手放し、まちを出ました。
あれも欲しい、これも欲しい。
欲望のままに、モノを増やし続ける仲間たち。
でもその過程で、誰も大切な何か(空)を失いかけているなんて、想像もしませんでした。
読み終えた後、飽和社会にどっぷりな自分自身や周りの環境に指摘を受けたようで、とても哀しい気持ちになりました。
そして、大事なことに気づいた「ぼく」のその後を知りたくてたまらなくなりました。
他のまちで、果てしなく続く空の元、どんな生活を送っているのでしょう?
5歳の今は、特別な感想を待たなかったと思いますので、娘がもう少し成長したら、また一緒に読んでみたいと思っています。
その時、「ぼく」のその後を娘と想像してみるのも楽しそうです。
絵が綺麗な絵本です。
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