絵本の情報
おばけリンゴ
【作】ヤーノシュ
【訳】やがわ・すみこ
【出版社】福音館書店
【ページ数】32
「おばけリンゴ」のあらすじ
むかし あるところに、ワルターという びんぼうな おとこのひとが いました。
ワルターは、リンゴのきを いっぽん もっていました。
けれどもこのきには、まだ ひとつも みが なったことがありません。
ワルターはある夜、心を込めて、こう祈りました。
「ひとつで いいから、うちのきにも リンゴが なりますように。
そんなに りっぱな みでなくても いいのです。
ひとつで いいから ほしいのです。」
うんと心を込めて祈ったので、願いはかなえられました。
リンゴがひとつ、実を付け、ワルターは嬉しくて仕方がありませんでした。
「ほんとうに、すばらしい まいにちでした!」
リンゴは日増しに大きくなりました。
ワルターは、あと一日、あと一日、と大きくなるリンゴを見張りました。
あんまり大きく育ったので、汽車の入り口が通らない程でした。
ワルターは、ある日、とうとうリンゴをとって、市場に歩いて運びました。
市場ではリンゴは売れませんでした。
集まってきた人たちに、からかわれ、ののしられました。
ワルターは、大きなリンゴをまた歩いて家まで運び、リンゴの番を続けました。
でも、もう前のように楽しくはありませんでした。
「ほんとに、なさけない まいにちでした!」
ちょうどこの頃、この国を、おそろしい竜が脅かしていました。
国中の作物を、食い尽くし、田や畑を荒らしていました。
王様は秘密警察官を呼び集め、うまく竜に贈り物をして、だまして、おっぱらってしまえ!と命じました。
「なんでもいいから、贈り物をする?」
秘密警察官たちは、ワルターのリンゴのことを思い出しました。
ワルターは、喜んでリンゴを差し出しました。
もう、気になってずっとリンゴの番をしている必要もなくなりました。
竜は、思惑通り、リンゴをガツガツと食べました。
あまりに勢いよく食べたので、のどを詰まらせて、死んでしまいました。
びんぼうなワルターの苦労や心配は、いっぺんに吹き飛びました。
元気を取り戻し、ほおもバラいろになりました。
夜、ベッドに入ると、よくこの出来事を思い出しました。
そうして、今度は、こう 祈るのでした。
「ふたつで いいから、リンゴが なりますように。
ちさな リンゴで いいのです。
かごに はいるくらいのが ほしいのです。」
感想
ワルターは、沢山のリンゴの実がなる隣の畑を、いつもうらやましく思っていました。
そんな中、願いが叶って、実を付けたひとつの「りんご」。
大事に大事に、「少しでも大きくなれ」ワルターは、ひとつのりんごを大きく育てました。
願いが叶い、ひとつの実ができると、更に欲が湧いて、できるだけ大きく育つまで、待ったのです。
しかし、とんでもない結末へ向かいます。
人の願い
欲望
葛藤
喜びと悲しみ
欲が肥大化し、リンゴを大きくしたことが本当に良かったのだろうか。
欲しいものは手に入ったのに、誰かに取られまいと、ずっと見張っていなければいけないリンゴは、もはや、自分を苦しめ、縛り付ける存在に。
一体、何が本当に望むものだったのだろうか。
ひとつのリンゴを通して、作者ヤーノシュは、様々な要素をこの絵本に盛り込みました。
世界中で高い評価を得る傑作です。
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