戦争で失われた幼い命について伝える絵本「ちいちゃんのかげおくり」




絵本の情報

ちいちゃんのかげおくり

【作】あまん きみこ

【絵】上野 紀子

【出版社】あかね書房

「ちいちゃんのかげおくり」のあらすじ

「かげおくり」って遊びを、ちいちゃんに教えてくれたのは、お父さんでした。

 

出征する、前の日。

青い空を見上げたお父さんが、つぶやきました。

 

「かげおくりの よくできそうな 空だなあ。」

 

ちいちゃんと、お兄ちゃんを中にして、四人は手をつなぎました。

そして、みんなで、かげぼうしに、目をおとしました。

 

「まばたきしちゃ、だめよ。」

お母さんが、注意しました。

 

「ひとーつ、ふたーつ、みーっつ。」

と、お父さんが、数えだしました。

 

「よーっつ、いつーつ、むーっつ。」

と、お母さんの声もかさなりました。

 

「ななーつ、やーっつ、ここのーつ。」

ちいちゃんと、お兄ちゃんも、一緒に数えだしました。

 

「とお!」

目の動きと一緒に、白い四つのかげぼうしが、すうっと空に、上がりました。

 

「きょうの、きねんしゃしんだなあ。」

と、お父さんが言いました。

 

お父さんは、戦争に行きました。

ちいちゃんと、お兄ちゃんは、かげおくりをして、遊ぶようになりました。

色々なかげを、空におくりました。

 

けれど、いくさが激しくなると、かげおくりなど、できなくなりました。

広い空は、楽しいところではなく、とても、こわいところに、変わりました。

 

夏のはじめの、ある夜。

空襲警報のサイレンで、ちいちゃんたちは、目が覚めました。

 

お母さんと、ちいちゃんと、お兄ちゃんは、逃げました。

炎の渦が、追いかけてきました。

 

沢山の人に、追い抜かれたり、ぶつかったり・・。

ちいちゃんは、お母さんとお兄ちゃんと、はぐれました。

 

朝になりました。

町の様子は、すっかり変わっています。

ちいちゃんは、家に戻りました。

しかし、家は、焼け落ちてなくなっていました。

 

(おかあちゃんと おにいちゃんは、きっと、かえってくるよ)

ちいちゃんは一人、ざつのうの中に入れてある「ほしいい」を食べました。

夜は、壊れかかった防空壕の中で、ねむりました。

 

明るい光が、顔にあたって、目が覚めました。

ちいちゃんは、あついような、寒いような気がしました。

ひどく、のどが渇きました。

 

そのとき

「かげおくりの よくできそうな 空だなあ。」

という、お父さんの声が、青い空からふってきました。

 

ちいちゃんは、ふらふらと立ち上がりながら、たったひとつのかげぼうしを見つめながら、数えだしました。

「ひとーつ、ふたーつ、みーっつ。」

 

いつの間にか、お父さんの声が。

それに、お母さんとお兄ちゃんの声も、重なって聞こえ出しました。

 

「とお!」

ちいちゃんが空を見上げると、からだがすうっと透き通って、空に吸い込まれていくのがわかりました。

 

(ああ、あたし、おなかがすいて、軽くなったから、浮いたのね。)

 

そのとき、むこうから、お父さんと、お母さんと、お兄ちゃんが、笑いながら歩いてくるのが見えました。

 

(なあんだ。みんな、こんなところにいたから、こなかったのね。)

 

夏のはじめの、ある朝。

こうして、小さな女の子の命が、空に消えました。

ちいちゃんは、一人ではありません。

たくさんのちいちゃん、たくさんのおにいちゃんが、この世界にいました。

いえ、いまでもいるのです。

無限宇宙にうかぶ地球星が、たくさんの子どもたちのよろこびで光りますように。

それを不可能と思うとき、すべては不可能になるのですから。

ー著者あとがきより




感想

小学生のときに、国語の教科書で知ったこの物語を、毎年、夏が来るたびに、思い出していました。

そのとき以来、一度も絵本を見ることはありませんでしたが、なぜだか、30年経った今でも、この「ちいちゃんのかげおくり」の内容を、鮮明に思い出すことが出来ました。

 

私の中では、「怖い、悲惨、可愛そう」という、当時は恐怖の疑似体験でしかなく、何であんな残酷な気持ちを強いられたのだろう?と大人になって、思いました。

 

しかし、娘が生まれてからは、時期がきたらいつか、一緒に読んでみてもいいかな、と思うようになりました。

今年、そろそろかなぁという感じで、図書館で借りました。

 

5歳の娘は、表紙から受ける印象からか、

「これはぜったいに こわい本だよね!」

「あー、これだけは、ごめん、読まないから、そのまま返して!」

と言っていました。

 

しかし数日後、

「やっぱり、ちょっと読んでみたくなった」

と、寝かしつけの絵本にこちらを選んで持ってきました。

 

その日は、目に涙をためながら、

「もう一回読んで」

と、続けて2回、隣で静かに聞いていました。

 

次の日も、次の日も、返却日が来るまで、毎日読みました。

家族で外食に行く際にも、お出かけするときにも、リュックに入れて持ち歩いていました。

 

「ちいちゃんは、体は死んじゃったけど、心は生き続けたんだね」

「お腹がすきすぎて、のどが渇いて、空中に浮いたら、家族に会えたんだね」

「またこの世界にうまれて、楽しい人生を送れるといいね」

など、娘なりに感じたことを色々と聞かせてくれました。

 

「ほしいい」も気になっているみたいなので、今度作ってみようと思っています。

恐怖を植え付けるだけの道具にならなかったことに、少しほっとしています。

 

戦争を考える、知るきっかけになる絵本だとは思います。

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ABOUTこの記事をかいた人

1児(女の子)の母。 毎日の読み聞かせは、愛情のシャワー。 ただただ絵本が好きで、毎日娘と楽しんでいます。 特におすすめの絵本を、このブログで紹介しています。 どなたかの、絵本選びの参考になりましたら幸いです。