絵本の情報
100年たったら
【文】石井 睦美
【絵】あべ弘士
【出版社】アリス館
【ページ数】32
「100年たったら」のあらすじ
「われわれは、ひゃくじゅうの王。どうぶつのなかで いちばんの王だ」
ライオンが ちいさかったころ、とうさんライオンは じまんげに そういった。
「ふん。それが、なんだっていうんだ。このそうげんには、どうぶつは もう、おれひとりさ」
ライオンは 草をたべた。
どんなにたべても、おなかは いっぱいにならない。
ある日のこと、いちわの鳥が そうげんに おりたった。
「あいにくおれは、にくは くわないんだ。おれのこうぶつは、草と虫さ」
その日から、鳥は そうげんで くらした。
月のきれいな夜、鳥は ライオンのせなかから ころげおちるようにして じめんにおりた。
「わたし、もういくよ」
と、鳥は いった。
ライオンは、鳥が どこにいこうとしているのか、わかった。
ライオンは 泣いた。
「また あえるよ」
と、鳥は いった。
「100年たったら」
朝がきた。
むねのしたに ひっそりと 鳥をだいて、ライオンがいた。
ライオンは みうごきひとつせず なにも たべようとしなかった。
たった ひとつのことを かんがえた。
100年って どのくらいだろう?
ライオンには わからなかった。
こうして、1年がすぎた。
2年がすぎ、10年がすぎていった。
もう ライオンもいない。
100年がたった。
そのとき、ライオンは 貝になっていた。
鳥は、海のちいさな 波になった。
波がくると、貝は きもちよかった。
あるとき、ひとりの男が やってきて
ライオンだった貝を とっていった。
また 100年がたった。
ライオンは、3人のまごのいる おばあさんになっていた。
ライオンだった おばあさんは、ひとりぐらしでも さびしいことはなかった。
あるにちようび、まごむすめが
いちりんの赤いひなげしの花を もってきた。
赤いひなげしの花は、あの鳥だった。
そうして・・・
ライオンは、魚になり、
白いチョークにもなった。
鳥は、りょうしになり、黒板になった。
なんどめかの100年が たったとき・・・・・・
ライオンは 男の子として うまれた。
鳥は 女の子として うまれた。
小学校の校庭で、ふたりは はじめてあった。
なんだか まえに あったことがあるみたいだ。
男の子は そうおもった。
感想
輪廻転生を描いた絵本です。
題名が気になり、図書館で借りました。
「ライオンと鳥」として出会い、その後、何度も同じ時代に生まれ変わり再会する2人。
あるときは波と貝で。
あるときは、チョークと黒板で。
そして最後に、人間の男女として。
(あれ?どこかであったことがあるような・・・)
初対面でも、懐かしさ、親しみを感じられたという経験は、どなたもお持ちなのではないでしょうか。
物語として、小学校2年生の娘に読み聞かせたのですが、最後の場面を読んだときに、ハッとしました。
自分の身にも起きていることなのだと捉えるのか、物語の中だけのことだとするのかは、読者次第です。
子供に真意を理解できるかは分かりませんが、「死んだらどうなるの?」という素朴な疑問の、答えのひとつにはなるのではないでしょうか。
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