悲壮感漂う”くま”のシュールな物語「ぼくはくまのままでいたかったのに・・・」




絵本の情報

ぼくはくまのままでいたかったのに・・・

【文】イエルク・シュタイナー

【絵】イエルク・ミュラー

【訳】おおしま かおり

【出版社】ほるぷ出版

「ぼくはくまのままでいたかったのに」のあらすじ

悲壮感が漂う、おじさんのような「くま」のシュールな物語です。

 

一匹のくまが、いました。

 

くまは、冬になり、お気に入りの洞穴で、冬眠をしました。

 

くまが冬眠をしている間、身勝手な人間たちが、森を切り開き、森の真ん中に、立派な工場を建てました。

 

くまは、冬眠から目覚めます。

 

冬眠から目覚め、辺りの変わり果てた様子に戸惑いを感じている「くま」に、工場の職長が言います。

「おい、お前、とっとと仕事につけ」

 

この日から、今まで、くまとして生活していた「くま」の人生が狂い始めます。

くまは、自分が「くま」であることを主張しますが、無駄でした。

工場で作業服をわたされたとき「くま」はもう、さからうのをやめました。

 

言われるままに、ひげをそりました。

労働者と同じように、近未来的工場で働き、人間と同じように、タイムレコーダーにカードを通す毎日を送りました。

 

しかし、やがて、役に立たなかった「くま」は、工場をクビになります。

 

「好きな所に行って、いいんだね?」

くまは、再び「くま」としての人生を取り戻しました。

 

くまは、一日中、歩き続けます。

くまは、森の中で、自分がどうするべきなのか、もう、分からなくなっていました。

何か、とても大事な何かを、くまは、忘れてしまったのでした・・・




感想

ユーモアと風刺を込め、シュールな世界観を描きだしているこの作品に、私は最初、笑いをこらえるのに、必死でした。

しかし、長い物語にもかかわらず、隣で娘は、じっと、大人しく聞き入っていました。

 

あまりにも衝撃的だったのかもしれませんし、幼いなりに、何かを感じ取り、自分なりに解釈しようとしていたのかもしれません。

私はあえて、何も聞かず、一冊を読み終えました。

 

自分が、自分でないと、周りに言われ続けたら・・・

「くまのままでいたかった くま」のむなしさを感じ、哀しくなります。

 

シュールな内容と、様々なメッセージを込めたこの絵本に、私は惹かれていました。

これは図書館で借りた絵本だったのですが、翌朝、娘が言いました「まま、昨日の絵本が欲しい」。

娘と、絵本の趣味が合うのだなと、嬉しく思いました。

※現在新書は販売されていないようです。中古か図書館でおさがしください。

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