絵本の情報
てん
【作】ピーター・レイノルズ
【訳】谷川 俊太郎
【出版社】あすなろ書房
【ページ数】32
「てん」のあらすじ
おえかきの じかんが おわった。
でも ワシテは いすに はりついている。
かみは まっしろ。
先生がそれを見て、言った。
「あら!ふぶきの なかの ほっきょくぐまね。」
「なにか しるしを つけてみて。そして どうなるか みてみるの。」
ワシテは マーカーを つかむと
かみに ちからいっぱい おしつけた。
「これで どう!」
「・」だけが描かれたその紙を、先生は私の前に置くと言った。
「さあ サインして」
次の週、お絵描きの教室の、先生の机の上にかかっているものを見て、ワシテはびっくりした。
ワシテが かいた・・・・ワシテの てん!
りっぱな きんいろの がくぶちに はいってる!
「もっと いい てんだって わたし かけるわ!」
あけたことも ない すいさいの セットを あけて
ワシテは はじめた。
ワシテは かきまくった。
ワシテは ためしつづけた。
いろんな いろの ちいさな てん。
それから ワシテは おおきな えふでで
おおきな かみに おおきな てんを
いろんな いろで かきちらした。
てんを かかないで
てんを つくることまで やってのけた。
がっこうの てんらんかいで、ワシテの てんは だいひょうばんだった。
中1のときの数学の先生、ミスター・マトソンに捧げる
先生は私に「じぶんのしるし」をつける勇気を与えてくれた
感想
ワシテが絵を描かないのは、なぜだろう?と理由を探りながら読み進めました。
たまたま機嫌が悪かった?
絵を描きたい気分ではなかった?
描きたいものが思い付かなかったの?
そんなことを考えながら、私自身の幼稚園時代の出来事を思い出しました。
5月、園児が体育館に集められ、大きなこいのぼりのトンネルを通り抜けるという体験が用意されました。
私は、友達と遊ぶのに夢中で、こいのぼりのトンネルに入る前に終わりの時間を迎えてしまいました。
後日、「こいのぼりの中はどんなだった?絵に描いてみましょう!」とお絵描きの時間が設けられました。
私は、何も見ていない、だから、何も描くことが出来ない、と思いました。
「自由でいいんだよ、何でも見えたものを描こう」と、何度も先生に言われました。
見えそうなものをいくら想像してみても、薄暗い灰色の空間しか思いつきませんでした。
いっそのこと、紙一面を灰色に塗りつぶしてしまいたい!と思いました。
今更、こいのぼりの中に入っていないということも、言えませんでした。
私は、隣の子が描いたお花の絵を真似して描きました。
私はこいのぼりには入らなかったけれど、あの中はお花畑だったんだ・・・と素直に思いました。
ありがちなことですが、隣の子に「まねしないで!」と言われました。
あのとき、この絵本のような先生が側にいてくれたら良かったのに、と思いました。
ワシテが絵を描かなかった(描けなかった)のは、自信がなかったからなのだと、大人になった今は分かります。
そして、少しのきっかけがあれば、負い目を感じないでもっと心が自由になれることを多くの大人は知っています。
そのきっかけ作りには、周りの大人の手助けが必要な場合があります。
自分のお子様にはもちろんですが、他の子供達と関わるときにも、心に寄り添いながら色んな物を引き出してあげることが喜びにつながるような大人で、この世界が溢れてほしいなと思います。
絵を描くことが苦手なお子様に。
絵を描くことに自信が持てない大人に。
勇気を与えてあげたい大切な人へのプレゼントにもおすすめの絵本です。
こちらの絵本もおすすめです
- ピーター・レイノルズその他の著書
- 谷川俊太郎著書
- 想像力のスイッチが入る絵本「はまべにはいしがいっぱい」
- 既成概念にとらわれないで!著者からのメッセージ絵本「そらのいろって」
- 汚れない!大きなサイズでのびのび楽しむ「スイスイおえかき」
- 字を読むのが嫌いな子に。読書介助犬の絵本「わたしのそばできいていて」