絵本の情報
ケチャップマン
【作・絵】鈴木 のりたけ
【出版社】ブロンズ新社
【ページ数】28
「ケチャップマン」のあらすじ
彼の名前は、ケチャップマン。
誰もが知る、押せば出てくる、あのケチャップ。
自分にしかできない何かを探して、
ケチャップマンは毎日悩んでいた。
ある日、ふらりと町に来て、発見したのは、
ポテトフライの専門店「N」。
店長にケチャップを進めてみたのだけれど、見向きもされず、
ちょうど人手が足りないと、なぜかそのままアルバイト。
ひたすら ポテトを揚げる日々。
ケチャップの出番はまるでなし。
ある日突然あらわれたのは、トマト頭の変な客。
トメイト博士、そう名乗る。
ケチャップマンを指さして、
「あれをくれ」
と大声を上げる、トメイト博士。
目の錯覚か、気のせいか、博士がケチャップをなめたとき、トマト頭が膨らんだ。
ケチャップ売れた、と笑う店長。
ケチャップマンは、変な気分で家に帰った。
あくる日も、あくる日も、博士は毎日あらわれた。
博士がケチャップをなめるたび、頭はどんどんふくらんだ。
はぷり
ある日、ついに、ケチャップマンのキャップの先に、博士が直接すい付いた。
ばちん
とうとうトマトが破裂して、真っ赤なケチャップがとびだした。
町中ケチャップの大洪水。
やがて町のあちこちでケチャップの味見が始まった。
お店にお客が押し寄せて、すぐにケチャップは売り切れた。
ところがケチャップマンの毎日はそれほど大きく変わらなかった。
ポテトの上げ方は半人前。
人手不足で大忙し。
疲れて帰る夕暮れの道。
頭のキャップをなでる風が、ふいに ぽーっという音を立てると、
ケチャップマンは久しぶりに、笑った。
感想
文芸社ビジュアルアート出版文化賞絵本部門個性派賞受賞作。
5歳の娘が大好きな著者「鈴木のりたけ」さんのデビュー作だそうです。
シュールでせつなく、衝撃も残る本作品。
子供向けの絵本、としてももちろんいいのですが、同著者の他の絵本よりも、大人用のアート作品といった要素が強いように感じました。
切り口も面白いのですが、絵がリアルで、インパクトがあり、一度読んでしまうと、特にトメイト博士のビジュアルなど、ふとした時に頭をよぎるようになります。
トマト、またはケチャップを目にしたとき、しばらくはこの「ケチャップマン」を確実に思い出すのではないかと思います。
5歳の娘も、絵とお話に心をわしづかみにされたようです。
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