絵本の情報
ウエズレーの国
【作】ポール・フライシュマン
【絵】ケビン・ホークス
【訳】千葉 茂樹
【出版社】あすなろ書房
【ページ数】33
「ウエズレーの国」のあらすじ
「あの子ったら、かわいそう。
いつもひとりだけ、はみだしてるわ。」
お母さんが、そう言った。
「たしかに、あの子はういてるな。」
お父さんは、そう言った。
「そのとおりかもしれないな」
盗み聞きしていたウエズレーは、うなずいた。
ウエズレーは、町のほかの子とは違っていた。
ピザもコーラも大っ嫌い。
サッカーなんて、ばかばかしい。
髪形だって、へんてこだ。
ウエズレーに、友達はいない。
ちょっかいを出してくる子なら、沢山いたけれど。
でも、大丈夫。
逃げるのは、得意だから。
学校から帰ると、お母さんは、毎日聞いた。
「きょうは、なにをならったの?」
ウエズレーは、曜日によって、決まった答えを用意していた。
お父さんは、いつも決まって、こう答えた。
「いまにきっと、やくだつさ。」
そのとき、突然ひらめいた!
お父さんの言う通り!
学校の勉強が、役立つときがやってきた。
自分だけの作物を育てて、
自分だけの文明をつくるんだ!
すごい自由研究になりそうだ。
次の日、ウエズレーは庭をたがやした。
夜、ウエズレーの畑に、種が飛んできた。
豆でも、トマトでも、ナスのばけものでもない、
誰もみたことのない、新しい作物を育てた。
やがて実がなった。
あまいその果物を、毎朝食べた。
固い皮は、乾かすとカップになった。
自分で発明した「きかい」で実をしぼって、
一日中、ジュースのみほうだい。
太く育った根っこの先は、大きな芋のようだった。
葉っぱをちぎって、パラパラかけると、
とても素敵な香りがついた。
茎から取った繊維で、帽子を編んだ。
服もつくることにした。
糸をまくのも、機を織るのも、自分でつくった「きかい」を使う。
近所の子たちも、だんだんおもしろそうだと気づきはじめた。
ウエズレーは、種をくだいて油をとる仕事を、手伝わせてあげた。
油は、肌にぬると日焼けをふせいで、いやな虫をよせつけない。
小さなビンに入れて、もといじめっこ達にも、わけてあげた。
もちろん、お金はもらうけど。
日時計を作ったから、もう腕時計は必要なくなった。
ウエズレーは、自分だけの時間をきめた。
新しい数の数え方も発明した。
「ウエズランディア」
ウエズレーは、自分の庭を、そう名付けることにした。
一人で遊べる、新しいゲームを考え出した。
道具は全部、庭の作物を使って作った。
近所の子たちがうらやましがるので、
大勢でできるゲームも考えた。
ウエズレーは、高いところに部屋を作って、夜はそこで寝ることにした。
夜空を見上げて、新しい星座を作ったりした。
ウエズレーは、服にも、ゲームにも、食べ物にも、何から何まで新しい名前をつけた。
そしてとうとう「ウエズレー語」ができあがった。
自由研究のしあげに、ウエズレーは、
ウエズランディアの歴史を、ウエズレー語で描いた。
八十個の文字も、全部、自分で作ったものだ。
インクは、種からとった油に、すすをまぜてつくった。
九月になって、学校がはじまった。
ウエズレーは、もう、ひとりぼっちじゃなかった。
感想
ちょっと変わった子。
周りと、なんとなくなじめない子。
どこか、浮いている子。
そんな子は、きっと、ウエズレーのように、自分の世界を持っているのだと、思います。
娘も、自分の(オリジナルの)言葉を持っています。
何かを発明するのが、大好きです。
たまに、ん?大丈夫かな?
と、親としては、ちょっと心配になることもあるのですが・・・
私も、娘のことを信じています。
ウエズレーのご両親のように。
ウエズレーの自由研究は、やっぱり、ちょっと、変わっていました。
(ウエズレー語では、そもそも誰も読むことができません)
それでも、個性が開花した、夏。
何も恐れずに、次々と発明し、文明を作り出し、自由研究として、しっかりとまとめあげたウエズレーに、誰もが拍手を送りたくなると思います。
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